2011.4.20.水.

滞ペ記 第一回<北京空港からのクライフターン狂>

カウンタースタッフ今村ことイマムの大好評北京日記のバックナンバーです
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北京へ行った。目的はない。

飛行機に乗るとありがとうがサンキューに変わり、降りるとそれはシェイシェイに変わった。サンキューの時点からすでに、僕の発する言葉の響きは文字通りカタコトしていた。これがあの有名な外国語ってやつかと脳内でひとりごち、口を開くたびおかしな感じで顔面の輪郭がゆるむのを感じた。

北京空港に着くと、そこはペキン空港ではなくペジン空港だった。ペキンなんて街、実際にはどこにもないのだ。体を浸す空気はひたすらにペジンの一刀流だった。ひょっとしたらペキンは日本でかりそめに転がっているだけのハリボテなのか。あるいはペキンはペジンとは似て非なる腹違いの双子なのかもしれない。

空港の外へ出るともう深夜で、吐く息は真っ白なのに、吸う息はなぜか生ぬるかった。タクシーをつかまえると、そこでは客が自ら扉を開けて助手席に乗り込むというD・I・Yなかよしシステムが採用されていて、運転手との距離感の近さにやや照れた。でもいくら照れても何もはじまらないことは、すでに日本で学んでいたため、投宿予定のホテルの名刺を運転手に渡した。運転手はハンハンと口角を上げて頷き、即、飛ばした。

運転手は首汽さんという四十代前半とおぼしき男性で、気は良いんだけど押しが弱くなかなか婚期に恵まれない役を得意とする昭和の性格俳優、みたいなムードを身にまとっていた。僕がトラベル中国語ブック片手に喋りかけてみると、そのカタコト具合と無内容さがおかしいのか、エサ待ちの小鳥のようにせっついてさえずり笑う。だがそれも束の間、やがて首汽さんは暗闇に飲まれ完全に道を見失い、硬質な無言とともに全方位に向けて緩急自在の鋭角的なターンを決めまくり、それと呼応して料金メーターは上昇し続けるのだった。

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