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2011.5.24.火.

滞ペ記 第三回<ライクアふくしングストーン>

滞ペ記 第三回 ライクアふくしングストーン

 U-STYLEは南鑼鼓巷の北の大通りにある、小さな美容室だ。

 通りに面した窓には、サービス内容が白いペンキで何行にもわたり羅列され、その前に立てかけられた小ぶりな黒板は、ブルース・リーやみのもんたや、サングラスをかけて斜に構えた複数の男たちの写真で埋まっている。入り口のドアにかかったダルマ柄の短いのれんをくぐると、室内は幼稚園児送迎バスほどの広さ。背もたれのついた格子模様のイスと、周囲をCDのプラケースくらいの大きさの鋲にぐるりと囲まれた姿見が2組ずつ、そのすぐ後ろには待ち人用の赤い合皮のソファ、奥の方には洗髪用の古いシャワー台と寝イスが1組、壁際には日本のギャル雑誌がずらりと面出しされ、レジ脇のノートパソコンからは中国語で歌われる『思い出がいっぱい』が小さく鳴っている。

 なんともキッチュ狂いなムードに気圧されるが、それでも北京でこういう個人色の強い散髪屋は珍しい。そのほとんどはなんの装飾もない工場然とした店構え、あるいは店舗を持たずにはさみ一本で流浪する公園の青空職人、それか店の前にだけ偽りの床屋看板を出して法の目をかいくぐる春売り屋だ。

 店主の陳超(チェンチャオ)は大きなヘアバンドに整った眉毛が印象的なエグザイル風の気のいい男で、僕が「アイウォントトゥービーボブディラン」と伝えると、それ飲み込んだとばかりに満面の笑みで大きく頷き、寿司職人よろしく手際よく髪をくるくる巻き込んでいく。アシスタントの叶子(イエズ)は『ツインピークス』のルーシーに顔と声がそっくりだ。カラーコンタクトを青々と輝かせながら、みかんやサンザシ飴をくれる。

 パーマ液を見せてもらうと、それは『しいなはのら』という会社の日本製を装った中国製で、商品の説明が日本語で書かれている。「強力に渦巻き状の、弾性の運動感、すがすがしく異臭がないです。シューして自然に長くなる。活気と活気をあふれますか。させてきれい熱くなる。心こめて温めて守って。」うなり、そして瞬間が訪れ、店の電気が落ちる。外はもう夜だが、他の店舗の灯りは変わらずついている。陳超はちょっと待っててとどこかへ消え、真っ暗な店内で懐中電灯を頼りに叶子と筆談する。漢字の偉大さを知る。1つの文字からいくつものジェスチャーが生まれる。2時間くらいして陳超がもどり光がもどり、ついでに気を利かしてどこかから持ってきてくれたPSPにふけり、終わり、顔をあげると鏡の中には落合ふくし君が。

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